§ 調性について

ベートーベンの交響曲第5番「運命」の第1楽章はハ短調である。同じくベートーベンのいわゆる第9のあの超有名なメロディは二長調である。このハ短調とかニ長調がその曲の調性である。 ところで調性とはどのようなして認識されるのであろうか。実は1音、又は1和音だけで調性は決まらないのだ。例えば、次の例は運命の冒頭もどきである。これはあまりにも有名なので最初のソソソミー―だけで「ハ短調」或いは調まではわからなくても「短調」だと認識するだろう。では聴いてみてください。



こうなるとこのメロディは変ホ長調になる。最初のソソソミーは変ホ長調の第3音と主音なのである。





上の楽譜の1小節目、3小節目、4小節目、6小節目の1拍めは全てドミソの和音である。しかし4小節目のドミソの和音は5小節目のファラドの和音の属和音であり、和音進行はV→Iでここの調性はヘ長調でる。また6小節目のドミソの和音はIV→V→Iと進みニ長調に解決する和音進行の下属和音の役目を担っている。 2小節目のソシレファの和音はハ長調の属7の和音でV7→Iと解決している。これら3つからわかるように調性はV→Iと進行することで決まるのである(Iがその調性の主和音)。 
  

§ コルトレーンの三角



再掲 五度圏におけるコルトレーンチェンジ
五度圏上にコルトレーンチェンジを表す音を結ぶと正三角形が出来る。これは始まった音に戻るということで4つの音で完結した体系と言える。そしてこのような正三角形は互いに音を重複せずに4つ描くことが出来る。
コルトレーンはこのうちB-G-E♭の三角を使ってジャイアントステップを作曲した。これをテナーサックスで吹いたのであるが、テナーはB♭管であり決して吹きやすくないと思うのだが(管楽器素人の想像)、何故この三角を選んだのかその理由はわからない。

 
さて、4つあるそれぞれの三角には名前はない。キーというのもおかしいし、良い呼び名を思いつくまで【ミソシの三角】と呼ぶことにする。
この曲の全体のキーはGということになっている。Gから長3度進行する方法は2種類ある。一つは上へG-B-E♭、もう一つは下へG-E♭-Bである。どちらも出来そうであるがコルトレーンは下行進行G-E♭-Bを選んでいる。上行進行に何か不都合があるのかどうか後で調べてみる。

冒頭、「調性について」で述べたように単にG-E♭-Bというコード進行ではそれぞれの調性が定まらない。一つのキーにつき(サブドミナント)-ドミナント-トニックの形態を取って初めて各々のキーに調性感が出る(曲の冒頭は普通トニックから始まる。但しトニック以外から始まることも禁止されていない)。
 



 
 

§ バルトークの中心軸システムとの関連

バルトークの中心軸システムでは5度圏図に直交軸を描いた時に指し示す4音は同じ和声機能を持つ。下図に於いてC、E♭、F# 、Aは和声的に同じ機能を持つ。次にお図でわかりやくするためにこれを赤の正方形で囲む

この考え方では12音を重複することなしに4音ずつ3つのグループに分けることができる。

今、仮に赤正方形にトニック(主和音)の機能を持たせたとすると後はT(主和音:)、S(下属和音)、D(属和音)の機能的関係から青正方形がドミナント(属和音)、黄正方形がサブドミナント(下属和音)の機能を持つことになる。

T:トニックC、E♭、F#、A
D:ドミナントG、B♭、C#、E
S:サブドミナントD、F、A♭、B

典型的なコード進行S→D→Tを中心軸システムに沿いつつある意味を持たせてコード進行を作ってみる。同じ機能同士はOK(T→Tなど)、TはS又はDに進行、SはT、Dどちらにも進める。DはTへ進行する、というのが機能和声の約束事である。
(セル譜1)
S
D
T
T
S
A♭、B
E、G
C
F#
B

D
T
S
S
D
E、G
C、E♭
A♭
D
G

T
T
S
D
D
T
C
F#
B
E
B♭
E♭

S
S
D
T
D
T
A♭
D
G
C
B♭
E♭

長い横長のセルが1小節、短いセルは半小節のイメージ、全部で16小節というイメージである。今、全体を短3度上に転調してみる。
(セル譜2)
S
D
T
T
S
B、D
G、B♭
E♭
A
D

D
T
S
S
D
G、B♭
E♭、F#
B
F
B♭

T
T
S
D
D
T
E♭
A
D
G
C#
F#

S
S
D
T
D
T
B
F
B♭
E♭
C#
F#

ここでいきなりコード付きジャイアントステップを掲載する。

上の楽譜にはコードネームの他に数字、△、―などがついている。数字は7の和音、9の和音、△は第7音が根音と長7度の関係にある和音(例:ハ長調でドミソシ)、―は短和音(例:ハ長調でラドミ)である。通常ジャズは単純な3和音を避ける。
ここでコード以外の数字、△、―を全部取り除くと上のセル譜2と完全に一致する。
勿論、セル譜2がジャイアントステップのコード進行表と一致するようにセル譜1で音を選んでいるのだが、これは中心軸システムでコルトレーンチェンジを矛盾なく説明出来ることを示している。
(再掲セル譜面2) 赤のコードがコルトレーンチェンジ
S
D
T
T
S
B、D
G、B♭
E♭
A
D

D
T
S
S
D
G、B♭
E♭ 、F#
B
F
B♭

T
T
S
D
D
T
E♭
A
D
G
C#
F#

S
S
D
T
D
T
B
F
B♭
E♭
C#
F#

コルトレーンの三角のところで
1.曲全体のキーはGということになっている
2.コルトレーンはコルトレーンチェンジを下行形で用いる
と書いたが、曲全体のキーはE♭のようにも思う。また、9小節目以降、上行形でコルトレーンチェンジを用いている。

ターキーセンセーによる打ち込み演奏